自分の話
こどものころ親や大人から、「あなたの夢はなんですか」や「将来は、どんな人になりたいですか」とよく聞かれました。もちろん、私の答えは「分からない」でした。何回も、何回も、ずっと考えたり、悩んだりしましたが、答えは全く出てきませんでした。夢なんか見つけられないと思っていました。普通の生活をするのに、何のために生きていくのかなんて考えなくてもいいんじゃないかと思っていました。
ところが、高校生になったとき、ある事故がきっかけで、色々考えるようになりました。この事故のせいで、父は仕事を引退しなければならなくなりました。それで、家族の経済的な事情のため、母はお金を稼ぎに、韓国へ行きました。母は体が丈夫ではないし、韓国語もぜんぜん分からないのに、一人で働いてお金を送ってくれました。しんどいときも、さびしいときも、病気のときも、母はいつも笑って、元気をふりしぼって「大丈夫」と言っていました。私はそんな母のすがたを見て、このままではいやだ、私も何かしなければならないと思いました。
そんなとき、担任の先生に朝日新聞の奨学生コースを紹介していただきました。「あ、これはいいチャンスじゃないか」と思って、日本に留学することにしました。
日本へ留学したおかげで、親切な先生たちに出会え、たくさんの友達もできて、本当に良かったです。
今、仕事にも慣れて、少しずつですが、貯金しています。私も家族の力になれるようになってきました。母も帰国して、安心しました。
今なら、誰かに「夢はなんですか」と聞かれても、すぐに答えられます。私の夢は家族を幸せにすることです。そのため、これからもいっしょうけんめい勉強し、働こうと思います。
お父さん、お母さん、今まで本当にありがとうございました。これからは全部私にまかせてください。私きっと、二人を幸せにします。